ろくろ

練達の指先から生命をさずかる器たち

タイトル
ろくろ
再生時間
3分52秒
映像内容
ろくろ成形作業、ろくろカンナ(削り)作業

江戸の昔の雰囲気を残す源右衛門窯の細工場(さいくば)では、小さな窓明かりと裸電球の下で、轆轤(ろくろ)作業が行なわれています。

ここではまず、土室(つちむろ)で静かに寝かせた坏土(つち)を、念入りに“土もみ”することから始まります。荒もみから菊もみへ。強く念入りに揉むと、坏土から気泡が抜け、柔らかさも均一になります。

そして、いよいよ砲弾型に丸めた坏土をろくろの鏡板に乗せ、作業が開始。ゆるやかに回転する坏土が、水で濡らしたろくろ師の両手につつまれ、愛おしむように引きあげ、押しさげられます。最初はあらがっているかに見えた堅い坏土は、いつしか、ろくろ師の手指に身を任せ、柔らかな生きもののように自由に形を変え、皿や壺に生まれかわっていきます。

つくられる器は、ミリ・ミクロ単位の精密さで、寸法を測るてづくりの「とんぼ」はあるものの、ろくろ師の長年培った感性と感覚だより。身体が覚えるまでに10年。それでも一人前といえるかどうか?という手技(てわざ)の世界なのです。ここまでが、成形作業。

しばらく天日で乾燥させた半製品の器達は、ふたたび「ろくろ台」に据えられて、こんどはカンナで削られます。ひとつ間違えばオシャカになりかねない際どい作業。何十個あろうと、まったく同寸法同厚に仕上げるため、ろくろ師はためらいもなくカンナの刃を入れて、器を削ります。

磁器は最初の乾燥で5~7%、次の本焼きでさらに10%もサイズが縮ます。器の厚みも、重さも“手取り八分”といわれる心地よい重量にしなければなりません。そうした計算の上に立って、しかも目に美しい造形美を追求すること。使う方の手になじむ器づくりは、源右衛門窯ならではのもの。つくり手たちの“こころ”が、あたたかなぬくもりとなって器の形になるのです。

用語のご説明

坏土(つち)
泉山陶石や天草陶石をスタンバーでついた細かい粒子でつくった精土。
土室(つちむろ)
伸びのよい坏土にするために、ビニールに包み、バクテリアを繁殖させる部屋。

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